桜が咲く頃に、私は

「久しぶりだな、早春。元気にしてたのか?」


お父さんがドア開けて、驚いた様子だったけれど、私達を家に上げてくれてリビングで話をすることになった。


この家は変わらない。


ずっと昔から、私の記憶の中の家と同じだ。


「まあね。誕生日に家出して、友達の家とかネカフェなんかを転々として生きてきたよ。もう一年近く家には帰ってないけど元気だよ」


「家出……か。あいつに任せて家に帰ったものの、まさかお前がそんな生活をしてたなんて。ところで、こちらの男性は」


私の言葉に少しショックを受けていたようだったけど、すぐに空を見て訝しげな表情に変わったけど、空は冷静だった。


「はじめまして。天川空です。早春さんとお付き合いさせてもらっています」


「今は空の家に住んでるんだ。空と、妹の夢ちゃんと三人でね」


一瞬、お父さんの顔が強ばったものの、夢ちゃんの名前を出したら少し表情が緩んだ。


「そうか……いや、父さんには何も口出しする資格はないな。まさか家出をしてるとは驚いたけど、早春は早春の居場所を見付けたんだな。それで、今日はどうしたんだ? 彼氏と二人でやって来るなんて、まさかその歳で結婚とか言い出すわけじゃないよな?」
< 219 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop