桜が咲く頃に、私は
いくら何でもそれは気が早いし、そんな報告で来たわけじゃない。


「違うよ。空の両親の墓参りで、お父さんの実家の近くまで来たから。私、お母さんからしか話を聞いてないから、本当はどうだったのか知りたくて。お父さんは……私を捨てたの?」


この話でさえ、空がお墓参りに行くと言わなければ聞くつもりはなかった。


そもそも、会う予定すらなかったから。


「あいつがそう言ったのか。その様子だと、父さんはとんでもない悪人にされてそうだな。あいつの性格なら、そうなっていてもおかしくないかな」


ため息混じりにお父さんが話した内容はこうだった。


離婚の決定的な原因は、お母さんの浮気癖。


お父さんが女を作ったというのは、お母さんが離婚を突き付けられたことを恨みに思って言った作り話だったようだ。


現在交際している人はいるけど、それも二ヶ月前からで、離婚当時はそんな人はいなかった。


お父さんが家事をしなかったという話も、家に帰ってから溜まっている家事をお父さんが片付けていたと、聞いてる話は全然違っていた。


私に関しては、もう大きいし、高校受験も控えていたから、引っ越すよりもお母さんの家で……ということだ。


もしも、本当のことを話せば、私がお父さんの所に行ってしまうかもしれないと思ったのだろう。


そうなると、養育費がもらえなくなるから。
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