桜が咲く頃に、私は
聞いてる話と全然違うじゃない。


それに養育費?


お母さんは「お父さんがお金をくれない」と、私には自分のことは自分でどうにかしろと、バイトまでさせようとしたのに。


お父さんの話が真実なら、そりゃあ家出をしても探そうともしないはずだよ。


私がいない方が楽なんだもん。


「結局、何も変わってないんだな。これなら早春の為に、離婚しなければ良かった。こんな歳で放浪してるなんて……今まで辛かっただろう」


悔しそうに、膝の上に置いた拳を握り締めて俯いたお父さん。


そうか……お父さんは私を捨てたわけじゃなかったんだね。


厳しくて、私に対してはいつも怒っていた印象が強かったけど。


いや、何となくだけど、本当は気付いていたんだと思う。


学校にかかるお金はお父さんが出してくれているみたいだし、毎月お小遣いと言うには多過ぎるお金を口座に入金してくれているし。


「うん……でも大丈夫。私は私がいるべき場所を見付けたから。心配しないで。今日、会えて良かったよ」


まだ頭の中がぐちゃぐちゃで、お父さんとお母さん、どちらの話がどこまで正しいのかがわからないけど、素直にそう思えたから言葉にすることが出来た。
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