桜が咲く頃に、私は
「もう行ってしまうのか。また、いつでも来ればいいんだぞ。それに、何か困ったことがあったら連絡しなさい。わかったね」


玄関で靴を履いている私に、名残惜しそうにお父さんが言ってくれた。


あまり余命を減らしたくないのに、私のことをずっと心配してくれていたことが嬉しくて、「34」になってしまったよ。


「大丈夫だよお父さん。それに……待つのはお父さんじゃなく、きっと私だから。本当にありがとうね。お父さんが私のお父さんで良かった」


不思議なくらい自然と出た笑顔を向けて、私はお父さんの家を後にした。


最後、私の言葉を聞いて笑ってくれたから、心が凄く軽くなった気分だ。


また、空と手を繋いで駅に向かう。


「嬉しそうだな。やっぱり来て良かっただろ?」


「そうだね。あの頑固なお父さんが、話してみたら物分りが良いんだもん。私がどれだけ反発してただけだって話だよね」


「俺のことも認めてくれたみたいだよな。怒られるかと思ったけど」


「そりゃあ……元が元ですから。私が少しでも真人間になって、感動したんじゃないの?」


笑いながらそんな話をして、私達は駅に到着した。


今から帰れば17時は過ぎる。


全然デートっぽくなかったけど、私達はこれでいいんだ。
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