桜が咲く頃に、私は
電車に揺られている間、次はお母さんの家に行こうという話になったけど、流石にそれは却下した。


お父さんから話を聞いたばかりで、冷静に話をする自信がないし、私が家出をして約1年、心配もしないような人だから。


最寄り駅に到着したの17時10分。


夢ちゃんからの連絡もあり、いつ帰っても良い状態だ。


「うわぁ……やっぱりカップルばっかりだねぇ。自分の誕生日にイチャイチャされて、イエス・キリストもどう思ってるのかね」


駅前のクリスマスイルミネーションが、通り過ぎる人達を照らして、私の言葉とは裏腹に、まるで祝福しているかのよう。


空も黒くなり始めていて、より一層その光が映える。


「どうでもいいだろ? そんなこと。俺達も他の人から見たら、イチャイチャするカップルに見えてるだろうしさ」


「それは……どうかな? 私達はクリスマスにお墓参りに行くようなカップルだからね。ここにいる人達には負けるよ」


「そうか? じゃあ、負けないってのを見せてやろうぜ」


また何をバカなことを……と思った次の瞬間。


私は空に抱き寄せられて。


人通りの多いこの駅前で唇を重ねた。


通り過ぎる人達の視線を感じながら、命を繋ぐ為じゃない、恋人のキスを。
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