桜が咲く頃に、私は
「ちょ、ちょっと……こんな所で何をしてんのよ」


慌てて顔を離して空を見ると「16」になっていて、私の反応を楽しむように微笑んでいる。


「何って。恋人同士のキス。もういいだろ。最後のクリスマスなんだから、俺達も恋人らしいことをしてもさ」


それは……全然良いんだけどさ。


お墓参りをデートプランに入れた空に、今更言われてもと、私はクスッと笑ってしまった。


「はいはい。でももう良いでしょ。こんな往来のど真ん中でキスしたんだから。そろそろ帰ろ? 夢ちゃんがご飯を作って待ってるよ?」


私がそう言うと、少しだけ寂しそうな顔をしたけど頷いて。


「なんだよ……ま、良いか。まだチャンスはあるしな。帰るか。夢がご飯を作って待ってるんだろ?」


なんだか良くわからないことを呟いていたけど、夢ちゃんからの連絡もあったから、帰る気になってくれたのは良かった。


なんたって、ここからが本番なんだから。


そして、手を繋いで家へと向かった。


時間稼ぎで空を連れ出すつもりが、まさかお墓参りに行って、私のお父さんに会うことになるとは思わなかったけど。


でも、行ってよかったと心から思える。

< 225 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop