桜が咲く頃に、私は
初めてこの家に来た時、夢ちゃんは嫌な顔一つせずに私を受け入れてくれた。


変わった子だな……なんて思ったけど、今なら何となくその気持ちがわかる。


命を分けた私と空。


きっとそれが、感覚として夢ちゃんには伝わっていて、私と空の二人で一人だったんじゃないかって。


だから、私と空、そして夢ちゃん。


三人で家族だったんだ。


でも……今は暗い部屋に私だけ。


誰もいなくなってしまったよ。


「なんで……なんでよ空。私に命を渡して死ぬことが、心に従った答えなの? そんなの……私は求めてないのに……」


私に優しい選択をしろと言った空は、自分は心に従うと言った。


空がいない人生を過ごすよりも、同じ日を二人で生きて、同じ日に死ねたら……向こうですぐに会えるから寂しくなんてなかったのに。


でも、もう空がいないから、私は死ぬんだよね。


命を繋ぎ止める術がなくなったから、きっと……次の0時を回ったら。


寂しいのもそれまでの間だけだ。


「『45』……か。もしも明日死ねなかったら、私はこれだけ生きなきゃならないってことなの?」


空がいないなら、1日でも100日でも同じなのに、私はどうして生きているんだろう。
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