桜が咲く頃に、私は
その後、翠がしつこく夢ちゃんに連絡を取り、何とか住所を聞き出せたのは、お昼を回った頃だった。


私は翠に引っ張られて駅に向かい、その住所に行く為に電車に乗った。


翠が夢ちゃんから得た情報は、どうやら昨日、お墓参りで降りた駅がおじさんの最寄り駅らしく、お寺からもそれほど離れてはいないということだった。


もしかしたら空は、こうなることがわかっていて、私とお墓参りに行ったのかな。


なんて、通り過ぎる景色を見ながら考えていた。


「……ごめんね翠。翠がいなかったら私、まだアパートで泣いてたかもしれない」


「やめてよ。私だって思ったよりダメージ受けてんだから。天川でこれだけ悲しいなら、早春が死んじゃったら……考えたくない考えたくない」


そうだよね。


空だけじゃなくて、当たり前だけど私も死ぬんだ。


残された翠や夢ちゃんは、死んだ人の思い出がそのまま悲しみに変わってしまう。


「迷惑掛けるね。面倒だったら、私のことは放っておいても良いから。安心して、化けて出たりはしないよ」


「バカかっての! 今から死ぬことなんて考えないでよ! あんたは……私が良いって言うまで死んじゃダメなんだからね!」


涙声でそう言った、隣に座る翠の手を握って、私は心の中で「ありがとう」と呟いた。
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