桜が咲く頃に、私は
昨日、空と歩いた町。


駅から降りて、指定された家に向かうと、夢ちゃんが私と翠を出迎えてくれた。


おじさん達は葬儀場やお寺に行っているらしく、今は家には夢ちゃんと空の二人だけ。


家に上げてもらい、和室に通されると、少し雰囲気が変わった空が布団の中で眠っていた。


「お兄ちゃん。お姉ちゃんと翠さんが来てくれたよ」


空の横に座って、優しく語り掛ける夢ちゃんは、一晩泣き明かしたのだろうか。


目が真っ赤になっていて、私よりも憔悴(しょうすい)しているように見えた。


当然だよね。


夢ちゃんは、空と二人で暮らして来たのに、その空が死んでしまったんだから。


私も悲しくはあるけれど、死んでもあっちの世界でまた会えるということを知っているから。


置いて行かれたのは悲しいけど、きっと夢ちゃんは私よりも悲しいだろうな。


「夢ちゃん、ごめんね。私のせいで、空と最期に一緒にいられなくて」


「それは……違うよお姉ちゃん。お兄ちゃんの最期に、お姉ちゃんが一緒にいてくれて私は良かったと思ってるよ。大好きな人にそばにいてもらえるなら、それが一番だもん」


そうは言いつつも、話していると涙が出てしまうのか、服の袖で目を押さえていた。
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