桜が咲く頃に、私は
相変わらず翠は手厳しい。


きっと空が生きていた頃の私なら、残された日々を必死に、それこそ泥水を啜ってでも何かを得ようと、生きる意味を求めようとしていたかもしれないね。


「心がね……多分死んじゃったんだ。空が死んだあの日、私の身体は生かされたけど……心が」


私がそこまで言った時、翠が机にお弁当箱を置いて、私の両の頬を挟むように叩いた。


「おい。天川が死んで悲しいのはわかったよ。だけど早春の人生には他の人はいないのかよ。私はいないのかよ。見えないのかよ。あんたの目の前にいるのは誰だよ」


少し怒っているような表情で、私を睨み付ける。


「そういうわけじゃないけど……」


「あんたの言葉遣いひとつ取っても、それは広瀬の影響だろうが。それが私に伝染して、私まで優しい口調になったんだろうがよ。今の早春を作ってんのは、天川の思い出だけじゃねぇだろ？」


もう一度バシッと叩いて、私の言葉を待っているかのように。


今まで、私に同調して、大体のことには賛成して同じことをして来た翠が、私に対してこんなに怒っている。


それは初めてのことで戸惑ったけど……翠は翠で色々考えてるんだね。
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