桜が咲く頃に、私は
空が死んで、その時が来るとわかっていた私でさえ、あんな別れ方になったことを受け入れられなかったんだ。


夢ちゃんの苦しさはどれほどだっただろう。


それに、次は私の番だ。


これまでずっと一緒にいた翠は……そりゃあ苦しいよね。


「死ぬまで必死に生きるんだろうが! 天川がいなくなって、それを諦めるのかよ! 今のあんただったら、空っぽだって嘆いてた頃の方がマシだからな!? あの頃のあんたはまだ、何かすることを探してたから!」


そんな風に考えてたんだ。


いや……でも、翠の言うことは間違ってないよ。


今の私は、生き返ったばかりの時のような「必死に生きる」という意志が無くなっていて、ただ死を待つだけになっていた。


これじゃあ、翠に怒られてもおかしくないよね。


「ごめん……そう……だったね」


残された日々を必死に生きて、空に私の人生を自慢してやると意気込んでたのに。


これじゃあ、空がくれた余命を無駄に消費してしまうだけだ。


空の命まで無駄に使ってしまうんだ。


そうはわかっていても、今の私はまるで泥の中にでもいるかのようで、どれだけもがいても身体にまとわりつく何かが邪魔をしているみたいに、この苦しさから抜け出せないでいた。
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