桜が咲く頃に、私は
動けば動くほど沈んで行って、思うように身体を動かせないもどかしさが動くことを諦めさせる悪循環。


一体何がそんなにまとわりついているのかと言われたら、答えはきっと「死」なのだろう。


「一人で動くのが辛いなら言いなよ。私は早春の隣にいるし、いつだって手を貸してやるから。あんたが死ぬその時まで、私が手を引っ張ってやるから。だから……死ぬ気で生きろよ!」


翠のその声に教室内が静まり返って、クラスメイトが一斉に私達を見る。


その中で、広瀬が不安そうな顔で私を見ていた。


「……ちょっと、大声出し過ぎたかな。行こう早春。めちゃくちゃ寒いけど、いつもの場所にさ」


そう言って差し出した手。


私はしばらくその手を見詰めて。


そしてギュッと握って立ち上がった。


廊下に出ると、ひんやりとした空気が全身を包み込む。


そんな空気の中を、翠に手を引かれて移動する。


屋上の前の踊り場まで来ると、翠が小さく一つ身震い。


「はー、やっぱ寒いね。最近あんまりここには来なかったけどさ」


「本当に寒いね。でも……ありがとうね、翠」


と、私がそう言った時だった。


階段を駆け上がって来る足音が聞こえたのは。
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