桜が咲く頃に、私は
夕食が終わって、翠が帰宅した。


私と夢ちゃんは順番にお風呂に入って、また長い夜が訪れる。


夢ちゃんが勉強をしている後ろで布団を敷いて。


布団の上で夢ちゃんの背中を眺めるのが、最近お気に入りの時間の過ごし方だ。


「……夢ちゃんさ、私が前に言ったこと覚えてる？ 死んだ人は雲の上の世界に行くって話」


「んー？ 覚えてるよ。私が怖がらないように言ってくれた話だよね」


「あれさ……実は本当だって言ったら……信じる？」


言うなら早い方が良い。


時間ギリギリになって言うのは、夢ちゃんも心の準備が出来ないだろうから。


今なら……たとえ信じるにしても信じないにしても、まだ私が死ぬまでに時間はあるから。


「え？ 何言ってるのお姉ちゃん。確かに知ってるみたいなこと言ってたけど……」







「私は……私と空は、10月の最初にトラックに轢かれて一度死んだんだよ」







私の言葉に手を止めて、ゆっくりと振り返った夢ちゃん。


その目が何を言おうとしているのか、私にはわからない。


ただ、刺すように冷たい視線だったのは感じた。


空の遺影を前にして、一体何を言っているんだこの人はとでも言いたいような目だった。
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