桜が咲く頃に、私は
正直、とても怖い。


これを言うことで、なぜ知っていたのに教えてくれなかったんだとか、お兄ちゃんの死をそんな嘘で誤魔化さないでとか、責められるんじゃないかと思ったから。


「私と空は……そこで天使と出会って、約1年の余命を二人で分け合って生き返ることになったの。でも、それには条件があって……幸せを感じてしまうとその都度余命が減るんだ。そして、毎日10秒以上キスしないと死んでしまうって言われたの」


目を細めて、今までのことを思い出しているのだろう。


「……そんなの信じられない。信じられないけど……それならお兄ちゃんの行動に説明がつく。自分が死んだ後のことを、死ぬのがわかっていたみたいに準備出来ていたし。一つずつ片付けて……まるで、死ぬ為に生きてたみたいだった」


やっぱり、夢ちゃんもそう感じていたんだな。


驚く程に空の行動は早かったし、行っていた大学も、ギターも急に辞めてしまったらおかしいと思って当然か。


「だけど信じられないよ。だってお姉ちゃんは生きてるんだもん。お兄ちゃんと命を分けたって言ったよね? お兄ちゃんは……幸せを感じてたから、早く死んでしまったってことなの?」
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