桜が咲く頃に、私は
いきなり核心を突いてきた。


空が幸せを多く感じていたのは確かだけど、それ以外にも残り日数を私にくれたから。


普段感じる幸せは、死の恐怖や不安で誤魔化すことが出来た。


だけど毎日必ずしなければならないキスだけは、気持ちが強く伝わり過ぎるせいか、誤魔化しが効かなくて。


「私と空が好き同士だったから、お互いに命を削りあってたんだ。幸せを感じないように生きてたんだけどね。それで……空は、残りの命を私にくれた。だから死んだんだ」


私の話を聞いて、ほんの一瞬悲しそうな表情を浮かべた夢ちゃん。


そして顔を逸らして、自分の中で消化しようとしているのか、口を真一文字に結んで、目が答えを求めるように左右に動いている。


今、夢ちゃんが考えていることはわかるよ。


私が許せないのだろう。


空の命を奪ったのは私だと言われてもおかしくないんだから。


「もしも……それが本当だとしたら。私はお姉ちゃんが許せない。お兄ちゃんが好きになったとしても、お兄ちゃんがお姉ちゃんの為に命を譲ったんだとしても……お姉ちゃんがいなかったらもっと長く生きられたってことじゃない!」


強い口調で、睨み付けるような目を向けられた。
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