桜が咲く頃に、私は
夢ちゃんからしたら、私が大切な人を奪ってしまったのだから、そう言われる覚悟はしていたけど。


実際に言われると、心が引き裂かれるように辛い。


「そうだよね。ごめんね」


「……でも、お姉ちゃんがいなかったら、もしかしたらお兄ちゃんは生き返ることも出来ずに交通事故で死んでたかもしれない。お姉ちゃんと一緒に生き返った以上、お兄ちゃんがお姉ちゃんを好きになるのは必然だったんだって思う」


考えれば考えるほど、一体何が正解だったのかわからなくなる。


あの時私が子供を助けなければ、二人して車に轢かれることはなかったんだ。


だけど、目の前で子供が轢かれていたら、私は一生後悔していたと思う。


どうして助けられたのに見殺しにしたんだって。


私が夢ちゃんに出来ることは……謝ることだけだ。


「本当にごめん。夢ちゃんが許せないなら私、この家から……」


「だから……信じない。お兄ちゃんは私達家族を愛して、必死に生きたんだ。そして誕生日の日に寿命が来たんだって……そう思うことにする」


その夢ちゃんの言葉は、私が予想していなかったものだった。


私の方がそれにどんな反応をすればいいかわからなくて、ただ、拒絶されなくて安堵していた。
< 262 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop