桜が咲く頃に、私は
夢ちゃんは、私が思っていたよりもずっとずっと大人だった。


私の話を信じるなら怒って喚き散らして、信じないならおかしな作り話をするなと怒ってくれれば良かったのに。


きっと、私に気を遣ったんだ。


信じ難い話だったけど、信じることしか出来ない、話と一致することが起こった。


妄想とも思える話を信じた上で、あえて信じないと言うことで、私が責任を感じないようにしてくれた。


「だから教えてほしい。絶対に信じないけど、お姉ちゃんはあとどれくらい生きられるのか」


「夢ちゃん……私は……誕生日を迎えた瞬間死ぬんだ」


私がそう言うと同時に、悲しそうな顔でカレンダーに目を向けた夢ちゃん。


「嘘……あ、で、でも私は信じないから。そんな話、私は絶対に。私が信じないんだから……お姉ちゃんはいなくならないでね」


今、凄く混乱しているのがわかる。


無理矢理に笑顔を作って、全然消化し切れていない様子で。


そんな夢ちゃんを私は……そっと抱き締めて。


頭を撫でて、「ごめんね」と呟くことしか出来なかった。


言うべきことは言ったから、私が死ぬまでに夢ちゃんが心の準備をしてくれればと思いながら。


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