桜が咲く頃に、私は
鍵は持っているから、中に入って待つことも出来るけど。


私が知ってるお母さんなら間違いなく、怒るか嫌味を言うかだろうから、出来ることなら入りたくないんだよね。


「仕方ない。帰ろっか。夕飯も作らなきゃだし。翠は今日はどうする?」


諦めて帰ろうと、振り返った時だった。


家の前に車が停まって、助手席から着飾った女性が降りて来た。


「お!? なになに、なんでJKがいるわけ! 正子ちゃんの知り合い!? めっちゃ可愛いじゃない。紹介してよ。ね?」


運転席のチャラそうな男性が、私と翠を見てニヤニヤしているけど、女性が助手席のドアをバタンと閉めて。


「知らない子よ。ほら、早く行って。また連絡するから」


明らかに不機嫌そうに男を追い払おうとしているのは……間違いなくお母さんだった。


「なんだよつれないな。まあいいけどさ。んじゃ、また後で連絡するわ」


そう言って男性は車を発進させて去っていった。


気まずい空気が流れて、ニコニコと手を振っているお母さんに、私は思い切って声を掛けた。


「あの……お母さん?」


「……久し振りに帰ってきたと思ったら、人の男に色目使って。あんたはどれだけ私の生活を壊せば気が済むの」
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