桜が咲く頃に、私は
その後、私達は放課後になるまでずっと話を続けた。


立ち入り禁止の屋上に出て、誰にも邪魔をされずに二人だけの時間。


10月に入ったばかりで、天気の良い日はブレザーを着ていると少し暑い。


青い空と風が気持ちよくて、こんな私でも自然と笑顔になった。


「あ、やっぱり桜井さんの笑顔、とっても可愛いです。まるで天使みたいな……キャッ!」


自分で言って、自分で恥ずかしがってるよ。


「ありがと。でもさ、広瀬は天使がどんなやつか知ってる? かなーりポンコツでいい加減だよ? だから一緒にはされたくないなぁ」


「え? あ、ごめんなさい! 桜井さんは……天使より可愛いです」


「……あんた、真面目な顔でそんなこと言って恥ずかしくないわけ?」


同じセリフをイケメンが言ったとしたら、きっとドン引きしてるだろうけど、不思議と広瀬の言葉にはそういういやらしさを一切感じなかった。


それがなんだか心地よくて。


「恥ずかしくないわけじゃないですけど……桜井さんは本当に可愛いです。僕なんかと正面から話してくれるし……良い人だってわかります。だから僕は大好きです」


「……あ、ありがと。でも、私、全然良い人じゃないよ」


真っ直ぐな瞳に、不覚にもドキッとしてしまって。


見えないけど、頭上の数字が1減ったのが感覚としてわかった。
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