桜が咲く頃に、私は
「怖いね。私も空みたいに焼かれて骨になって、存在がこの世から消えてさ。いなくなったことにゆっくりと周りは慣れて行くんだよ。きっと何年か経って、皆が集まった時に少しだけ話題にされる程度の存在になるんだ。それが……たまらなく寂しい」


そこに空がいるわけではないとわかっているのに、夜空を見上げて心の内をさらけ出す。


もう二度と戻ることのない世界だろうけど、死んだ後は遠い過去の、思い出の住人になってしまう。


その先の人生を、生きている人達と共に歩むことは出来なくなるんだ。


そんなことを考える私を、ふわっとした温もりが包み込んだ。


優しく、柔らかい感覚。


「大丈夫……お姉ちゃんは大丈夫だから」


夢ちゃんが私を抱き締めて、そう言ってくれた。


「私が……思い出になんてさせないから。お兄ちゃんの想いと一緒に、ずっと生きていこうよ。いつも、そばにお兄ちゃんがいてくれたって思えるようにさ」


「夢ちゃん……」


それは、夢ちゃんなりの私への励ましだったのだろう。


大丈夫、私は忘れないから。


記憶の中だけの存在にはしないからって。


「愛してるは言わないの?」


笑って尋ねると、夢ちゃんも笑顔になって。


「もちろん。愛してるよ」


私の肩に頬を寄せた。
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