桜が咲く頃に、私は
それからさらに一週間。


学校帰りに毎日、私と翠はお母さんの家を訪ねたけど、ろくに仕事もしていないはずなのにあの人は家にはいなかった。


それとも、私がいない一年の間に働くようになったのかな。


なんてことを考えながらまた今日もこの家にやって来た。


もしかしたら、私が死ぬまでに会えないかもしれないなと思ったけど……今日は、この前の車がカーポートに停まっているから家の中にいるのだろう。


やっと家にいる時に来ることが出来たと、ドアを開けようとしたけど鍵が掛かっていた。


でも、合鍵を持っている私には何の意味もない。


鍵を開けて、翠と二人で家の中に入ると……。


「汚い家だね……掃除してんの? うわ、見てよこの埃……」


全く掃除なんてしていない様子に、私はため息をついた。


「お母さんは片付けとか掃除が出来ない人だからね。ま、どうでもいいけど」


それにしても、一階からは全く人の気配がしない。


二階かなとは思ったけど、あのチャラい男が一緒にいるなら、もしかしたら見たくない場面に遭遇してしまうかもしれないな。


なんて考えながら、私は階段を上がった。


なるべく足音を立てないように、そっと。
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