桜が咲く頃に、私は
普通なら、こんな言葉を投げ付けられたらどう反論するのかな。


怒鳴り声を上げながら、掴み合いになって大喧嘩するかもしれない。


でも私は、蔑んだ目を母親に向けていた。


「あんたはそういう男にしか相手にしてもらえなかったんだろうね。お父さんと私がいるのに他に男を作ってさ。そこにいるやつが物語ってるよね。あんたにはそういう下半身でしか考えられないやつがお似合いだよ」


「なっ……」


まさか実の娘にここまで言われるとは思っていなかったのか、それとも私が暴力に訴えるとでも思っていたのかはわからないけど、お母さんは言葉が出ない様子。


チャラい男は相変わらず私を見てニヤニヤしていたけど。


「そんなわけで、そろそろ最後の挨拶をしたいと思います。お母さん、私を産んでくれてありがとう。おかげでこの家を出てから、私は本当に幸せで、あなたに与えてもらえなかった愛を、他の人から与えてもらえました。金輪際、二度と会うことはないし、親子でもないので私の前に姿を見せないでください。お父さんにもこのことは伝えて、養育費を払わなくて済むように、親権を取ってもらいますから。それではさようなら。くだらない男とずっとイチャイチャしててください」


全ての言葉に侮蔑の意味を込めて、吐き捨てるようにそう言い切ると、私は笑顔で部屋のドアを閉めた。


もう二度と、この家には戻って来ないと誓って。
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