桜が咲く頃に、私は
「お父さんお母さんお兄ちゃん。今日も夢とお姉ちゃんは元気です。学校に行ってくるから、しっかり見守っててください」


夢ちゃんと一緒に、私も三人の写真に手を合わせる。


そして家を出るのが日課となっていた。


夢ちゃんはまだ、私が死ぬなんて信じてないのかな。


それとも、死ぬとわかっていて、あえて気にしないようにしているのかな。


どっちにしても、私にとっては普段通り接してくれるからありがたいよ。


学校に向かう途中、翠が私を待っていてくれた。


「おはよ、早春」


「おはよー。どうしたの翠。『三日眠ってません』みたいな顔してさ」


「あんたに言われたくないわ。それに……眠れないよね。今日まででしょ?」


夢ちゃんとは対照的に、私の死をまるで自分のことのように悩んでくれている。


でも、そんなに悩まなくて良いんだよ翠。


私は元々死んでいて、天使の気まぐれでもらえた時間が尽きようとしてるだけなのだから。


「寂しくて、悲しくて、ああ、もう死んじゃうんだって泣きそうになるけど……少し、楽しみでもあるんだ。空に会える。愛する人が待っててくれてるって考えたらさ」


少しでも明るく言おうと思ったけどダメだった。


口は笑おうとしても、顔の他の部分が笑ってくれなかったから。
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