桜が咲く頃に、私は
〜夢ちゃんへ


嘘じゃなくてごめんね。


一緒に生きられなくて、本当にごめんね。


こんな、家出をしている素性のわからない人間を迎え入れてくれて、家族のように接してくれてありがとう。


夢ちゃんと空の三人で暮らしたこの数ヶ月は、私の今までの人生で一番幸せな時間でした。


沢山のことを教えてくれたよね。


料理なんて何も出来なかった私が、夢ちゃんのおかげで色んな物を作れるようになりました。


大切な友達で……大切な妹。


もしもこんな運命じゃなくて、普通に出会えていたら、いつか本当に妹になっていたのかな……なんて考えるよ。


私がいなくなっても、お願いだから強く生きてください。


夢ちゃんの命が尽きるその時まで、生きられなかった私と空の分まで生きてください。


その時に、夢ちゃんが歩んだ人生という旅のお話を聞かせてください。


その時まで……。



「その時まで……大丈夫だよね? 夢ちゃんなら」


ペンが止まって助けを求めるように写真の空に尋ねるけど、空は笑ったままで。


「どうせ文章が下手だとか言いたいんでしょ。わかってるよ。今は私のことじゃなくて夢ちゃんのこと」


わかってくれてるはずだよね。


そう信じて、私は続きを書き始めた。

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