桜が咲く頃に、私は
今日死んでしまうという特別な日。


だからこそ、いつも通りのことをするのがいい。


残り4時間を切った。


お風呂から出て、パジャマに着替えて。


翠が帰った部屋の中で、私はいつものように空がいた場所で夜空を見上げた。


「何となくだけど、どうしてあんたが夜空を見てたかわかるよ。こうしてるとさ、不安が少し消えるんだよね……」


その理由は沢山ある。


こんな広い宇宙の中にいる私が抱えてる不安なんて、とてもちっぽけなものだと思えたり。


星が放つ光は、私が生まれるよりももっともっと前に放たれたもので、今放たれた光が届く頃には私どころか、今この地球で生きている人達は全員いなくなるとか。


壮大すぎる空間の中では、私一人の不安なんてあまりにも小さすぎて、誰も気にしていないんじゃないかって。


他にも考えようと思えば理由なんていくらでも出て来る。


だからこそ、私はため息をついて下を向くより、空を見るようになったんだ。


そこまで考えて……私は気付いてしまった。


空は、死の間際でも空を見ていたのだから、私の考えはあながち間違いではない。


だったら……空は毎日抱え切れないほどの不安を夜空に放っていたんじゃないかって。


好きだから見ているというのもあるだろうけど、兄妹二人で生活する為に頑張っていたんだろうな。
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