桜が咲く頃に、私は
「相変わらずいじめられてんなぁ、広瀬のやつ。うちのクラスだけじゃないみたいだよ? あいつ、中学の同級生からもいじめられてんだってさ。何されても文句言わないから、どんどんエスカレートするみたいだねぇ」


「何、私と広瀬が話してる間に、そんなこと調べてたわけ? まあ、どうでもいいけどさ。あれでいいのかね? なーんか情けない」


「おやおや、早くも幻滅したって? あんたが何を話してたか知らないけどさ、振るなら早い方が広瀬の傷も浅いよ?」


そんなに昔からとは知らなかったけど、いじめられてたのは知ってるよ。


だから私は驚いたんだ。


ウジウジしてるだけだった広瀬が、私に告ったことがさ。


私も翠も、いじめなんてくだらないし、そんな時間があるなら楽しいことをしたいって性格だから、広瀬をいじめたことなんて一度もなかったから。


それが原因なのかな。


私のことを好きになったのは。


「……私が何してもいじめなんてなくならないよね。あいつが自分でどうにかしないとさ。行こ。考えても意味ないから」


「厳しいねぇ。んで、今日はどこ行く? またネカフェ?」


「さあ? 歩きながら考える」


余命が半年だってのに、いつもと変わらない行動。


これじゃあ、広瀬のことを情けないとか言えないよね。
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