桜が咲く頃に、私は
学校を出て、私達が行くのは専らファミレスか某バーガーショップ。


安く済んで長居できるからだ。


今日はバーガーショップの窓際の席でぼんやりと道行く人を眺めながら。


「えっと……あんたの数字が178で、今が10月5日だから……んー、このまま1日で1つ減ると考えたら四月直前に0になっちゃうんだねー」


スマホのカレンダーを開き、ハンバーガーを食べながら難しい顔をして計算する翠。


「桜が咲く頃に……死んじゃうんだよね」


「……やめやめ! せっかく生き返ったのに、しんみりした話なんてしたくないっての! で、あんたは死ぬまでに何かしたいとかないわけ? これじゃあいつもと同じじゃない。ただ、ダラダラと時間が過ぎるのを待ってるだけ。こんなんじゃ、すぐに半年なんて経っちゃうよ?」


「わかってるよ! わかってるけどさ……何も思い浮かばないんだよ。私、空っぽの人間だからさ。なんであの時、余命を分けるとか言っちゃったんだろ……」


やりたいことが何もない私と違って、天川にはやりたいことがあるようだったから。


無意味に張り合って、1年あった余命を半分に分けてさ。


「生きたかったんじゃね? 生きる意味はわからないかもしれないけど、生きるのに理由なんていらないっしょ。私は、早春がいてくれるのは退屈じゃなくて良いけどね」
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