桜が咲く頃に、私は
外に出ると、絶賛喧嘩中の天川と女性。


喧嘩の原因も何もわからないから、私も野次馬でしかないんだけど。


「よっ! 天川! 昨日ぶり! なになに? この人彼女?」


翠が声を掛けると、女性はあからさまに「誰こいつ?」という表情で私達を見て。


「あのね、見ての通り立て込んでるの。大事な話をしてるから、お子様は引っ込んでくださる?」


「だから! 言っただろ! もう俺は退学届けを出したし、大学には行かない! お前とももう別れるって言っただろ! いい加減にしろよ!」


「なっ! だから! それが納得出来ないって言ってるの! 理由を言いなさいよ!」


翠は軽く野次馬をするつもりだったのだろうけど、想像以上に修羅場じゃないこれ?


遊び半分で首を突っ込んでいい話じゃないと思うんだけど。


天川の数字は「179」で、幸せを一度も感じてないというのがわかる。


少なくとも生き返ってからは。


「まあまあ、こんなところで喧嘩もなんだし、どこか落ち着ける場所で話した方がいいんじゃね?」


往来の真ん中で喧嘩をしなくてもという思いと、このまま何か奢ってもらおうという魂胆が見える。


私には、翠の考えがわかるよ。
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