桜が咲く頃に、私は
「なっ……い、いや、長い! 長いわよ! 本当にふざけてるわ! 私をバカにしないで!」


恐らく10数秒が経ち、ゆっくりと唇を離す。


普通なら、見せ付けられた人も、急にキスされた私も怒って、ビンタの一発もお見舞いするのだろうけど……これをしないと私達は死んじゃうからな。


連絡を取る手間が省けたと思うしかないよね。


「俺は本気なんだよ。こいつがいないと死んでしまうし、こいつも俺がいないと死んでしまう。そんな関係なんだよ。悪いな花子」


「だから! 名前で呼ぶなって言って……もうっ! 絶対に許さない!」


最初よりもさらに怒って、翠を押し退けて去って行った花子を見て、なんか申し訳なく思える。


「……で? い・つ・か・ら、早春が天川と結婚する関係になったんだって?」


翠が天川に詰め寄ると、天川は顔を引きつらせて首を横に振りながら。


「わ、悪い……なかなか納得してくれなくてさ。でもほら、キスしないといけないのは変わらないし……別にいいだろ?」


「いいわけねぇだろ? わざわざこんな道のド真ん中でキスして、お前の元カノに恨まれなきゃならねぇ正当な理由を言えよ。おぉん?」
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