桜が咲く頃に、私は
こういう時の翠の因縁の付け方は天才的だ。


イチャモンではなく、正論をぶつけるから相手も何も言えなくなることが多いんだ。


「いや……その……悪い。あいつがまさかこんなにしつこいとは思ってなくて」


「口だけの謝罪はいらねぇんだよ。誠意は形で見せろや。ほら、あんだろ? ご飯奢ってくれるとか、お小遣いくれるとかよ!」


ここまで来るともはや恐喝だ。


でもまあ、翠が私の為に言ってくれてるってことがわかるから、私はクスッと笑った。


「今、ハンバーガー食べてたのにまだ食べるのか? でも悪い、そういう話なら俺には無理だ。今は少しでも金を残さなきゃならないんだよ」


「知らねぇよ! 天川の都合なんてこっちには関係ねぇんだよ! ……あぁ、そうだ。あんたさっき、早春と一緒に住んでるって言ったよね?」


いやらしい笑みを浮かべて私を見る翠。


いやあ、この物怖じせずに因縁を付けられる勇気の、百分の一でもいいから広瀬に分けてあげたいわ。


「翠、あんたがそういう顔する時って、大抵悪いことが起こるんだけど……」


「まあ、私に任せなって」


そう言うと、天川の首に腕を回して何やらコソコソと話し始めた。

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