桜が咲く頃に、私は
そこからの夢ちゃんの動きは凄まじかった。


部屋の掃除、洗濯物の片付け、風呂の掃除から夕飯の支度まで。


あまりの手際の良さに、私はただただ驚くだけで。


手伝えることもなく、テーブルに料理が並ぶのを見ていることしか出来なかった。


そして、三人で食卓を囲ってご飯を食べ始める。


「夢、あのな。俺、大学を辞めて来たから。明日から仕事を探そうと思うんだ」


「は? なんで! そんな大事なことを一人で決めたわけ!? というか、お客さんがいるのにする話じゃないでしょ……」


「大丈夫、こいつも知ってることだから。それに、お前はもうすぐ受験だろ? 俺とお前の授業料を払ってたら持たないんだよ。でも、俺が働けば、お前の高校三年くらいはどうにかなるんだ」


話が重い……。


いや、私の人生が薄くて軽すぎるだけかもしれないけど……何となく。


何となくだけど、天川が余命を欲しがった理由がわかった。


きっと、夢ちゃんのことが心配なんだろうな。


「……お母さん、生命保険にも入ってなかったもんね。もったいないからって。そっかぁ……私も働いてもいいよ。お兄ちゃんだけが学校を辞めて働くなんて、悪いよ」
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