桜が咲く頃に、私は
「バーカ。せめて高校は出ろっての。夢は何も気にせずに、これくらい俺に甘えろよ」


「……ん。考える。てかお兄ちゃん、やっぱり今する話じゃなかったよ。早春さん黙っちゃったじゃない! ごめんね、バカなお兄ちゃんで」


確かに今する話じゃなかったかもしれないけど、正直私は羨ましかった。


お父さんもお母さんも、きっと私の為にここまで考えてくれることはないと思うし、私だって考えないと思うから。


私は……大した理由もなく、この二人が一緒にいられる時間を半分奪ってしまったんだ。


「なんか……ごめん」


一所懸命に今を生きて、大切な人との時間を、大切な人の未来を一番に考えている天川空。


人と比べる度に、どれだけ私がちっぽけでくだらない人間かというのが浮き彫りにされて……少し惨めに思えてしまう。


それを悟られないように虚勢を張って、大切なものがあるかのように振る舞ってさ。


「ほらぁ! 気を遣わせちゃったじゃない! なんでわからないのかね、勉強が出来ても頭が悪いって本当にこのことだよ! 早春さんもね、もう文句言ってやってよ!」


ご飯を食べながら、夢ちゃんが不機嫌そうに天川を睨み付ける。


「あー、空気読めないし、人の迷惑考えずに自分勝手に話をするし、嫌なやつだって知ってるから大丈夫」
< 41 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop