桜が咲く頃に、私は
それから、夢ちゃんと意気投合して、予想に反して楽しい食事をすることが出来た。


天川は「まいったな……」と何度も呟いていたけど、私や花子に見せたのとは違う、夢ちゃんにだけ見せる表情だというのがわかって、そういう人がいるのは羨ましく思う。


ご飯を食べて、片付けを手伝って、お風呂にも入って部屋に戻ると、布団が敷かれていた。


「お風呂ありがと。迷惑ついでに洗濯もしていいかな?」


窓を開けて、夜空を見上げている天川に尋ねると、小さく呟くように。


「洗濯機に入れておけよ。夢が後で洗うから」


「夢ちゃん、いい子だな。あんたの妹とは思えないくらいにさ」


「俺の妹とは思えないは余計だっての。でも、本当にいい子に育ったと思うわ。兄バカかもしれないけどさ」


Tシャツにハーフパンツという服装で、髪が半乾きのままで天川の隣に座る。


夢ちゃんはいい子だと言うのはわかる。


そして、天川が夢ちゃんの為に、死んだ後のことを考えているというのもわかる。


それはわかる……わかるけど……何か腑に落ちない。


「……あんたさ、あれだけ欲しがった命、もしかして死ぬ準備をする為だったの? 大学を辞めたのも、仕事をするって言ったのも……全部。やらなきゃならないことって、それだったの?」
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