桜が咲く頃に、私は
いや、いじめられているのがわかっているから、広瀬に押し付けて帰るやつもいるというのは、少し考えたらわかることだ。


それに、日に日に小さな傷が増えているのも気付いている。


「なあ広瀬。嫌なことは嫌だって言わないと、いつまで経っても変わらないよ? あんた、ずっとこのままでいるつもり?」


私の言葉に、広瀬は驚いた様子で。


「も、もしかして気付いてた? 桜井さん、人に興味がなさそうだから、僕のことも興味がないかなって思ってたけど……気にしてくれてたんだ」


「そりゃあ……彼氏ですから」


言葉に出すと、ちょっと恥ずかしいな……と思ったけど、それ以上に広瀬の方が照れている。


本当に小動物みたいだなこいつは。


「でも……無理だよ。桜井さんは強いから、言いたいことを言っても周りは何もしてこないけど、僕みたいな人間は、言いたいことを言ったらいじめがもっと酷くなるんだ。だから、何も言わないのが一番良いんだよ」


悲しい。


だけど、本心を話しているということがわかったから、ほんの少し嬉しくもあって。


「だったら、それに立ち向かえるくらいに強くならないとさ。広瀬、私に言いたいこと言ってるだろ?」
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