桜が咲く頃に、私は
そんな話をしながら交差点に差し掛かると、ギターやベースなんかを担いだ人達が目の前に。


少し離れた場所にはライブハウスが点在しているから、そういう人をよく見かけるんだ。


15歳の誕生日に駅で出会った人達を思い出して、ぼんやりと目の前の人達を目で追っていた。


あの時、あの人になんて言われたんだったっけ。


どうしても思い出せないな。


今の私だったら、別に断られてもショックを受けなかったのに。


断られすぎて、そういう感覚もなくなっちゃったんだろうな。


「何考えてんのさ。いざとなったら、広瀬んとこに転がり込めばあいつも文句言わないっしょ」


「バーカ、そんなんじゃないって言ってんでしょ。私は別にそういう……」


そんなくだらないやり取りをしている私達の前で、バンドマンが笑いながら後ろに下がった時だった。


ドンッと、押されるようにして母親と信号待ちをしていた小さな子供が倒れて、手に持っていたおもちゃが車道に転がったのだ。


それを追い掛けて、子供が母親から離れて車道に飛び出した。


母親は……スマホに夢中でそれに気付いていない。


「あ……危な……」


言うよりも早く、私は駆け出した。


どうしてそんなことをしたのか、私はわからなかった。
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