桜が咲く頃に、私は
「今更メイドカフェって……まあ、別に文句は言わないけど、誰がやろうって言い出したわけ?」


深沢を無視して広瀬に尋ねると、広瀬はバツが悪そうにゆっくりと深沢の方を見た。


「うるせぇな! 私だよ! 私がメイド服着れば、学校中の男が集まるだろうがよ! お前らはしっかり用意すれば良いんだよ! テメェらみたいなカースト最底辺のザコは、私の養分になってりゃいいんだよ!」


もう、どこから突っ込んで良いのかわからないけど、そう思い込んでるなら勝手に思っていればいい。


「んで、このグループは何するの?」


「あ、ああ。看板を作って、字を書こうと思ってるんだけど……これだけじゃ寂しいから、装飾をどうしようって話してたんだ」


「ふーん。じゃ、さっさとやろっか」


翠も巻き込んで、クラスメイトとこうやって作業をするとか、私にとっては初めてだった。


ほとんど話さない、大人しい人達とも普通に会話をしてたし、少しずつ……私達がグループに溶け込んで行くような感覚が心地良かった。


作業を始めて、どれくらい経ったのか。


深沢は怒鳴るだけで鬱陶しかったけど、時間も忘れて没頭出来た気がする。


「よーし、今日の作業はここまで! 明日もしっかりやれよ! サボったら家まで行ってぶっ飛ばすかんな!」
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