桜が咲く頃に、私は
時計を見ると20時を回っていて、外はもう真っ暗だった。


こっちの看板の方は大丈夫だけど、衣装を作ってる方は深沢に文句を言われながら良くやってるよ。


「あのさぁ、文句ばっか言ってないで、お前も少しは手伝ったら? その方が早く終わるし、案外楽しいよ?」


家庭科室から出て行こうとする深沢にそう言うと、足を止めて、ゆっくりと私の方にやって来て。


「今までサボってたやつが調子に乗って説教してんじゃねぇよ! 私は最初っからやってたんだよ! 彼氏の前だからって調子こいてんじゃねぇぞ!」


竹刀を振りかざして、私に向けて振り下ろす。


咄嗟に腕を上げて、身を守ろうとしたけど……。


バシンッ!


と、派手な音が聞こえて……目を閉じていた私が目を開けると、私を庇って広瀬が竹刀を頭で受け止めていたのだ。


「いっ……たああああぁぁぁぁぁっ! いたたたたたたっ! 血、出てない!? ダメだ、死ぬぅぅぅっ!」


頭を押さえて、私に殴られた部分を見せる広瀬。


「うぉい! 何してんだよブタ沢! テメェ調子に乗ってっと角煮にするぞコラ!」


私が怒るよりも先に、翠が深沢に詰め寄った。


広瀬を殴ってしまった当の深沢は、状況を把握出来ないようだった。
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