桜が咲く頃に、私は
そこまで劇的に変わったとは思わないけど、なんだろうな。


皆で一緒に残って、今日の為に頑張ったこととか、余命が残り少ないとか色々あるけど……広瀬のことが大きいかな。


「そりゃあそうでしょ。底なしに優しい彼氏がいるんだから、私だって広瀬に似合う女になりたいって、少しくらいは思ってるわけよ」


「……恋してるってこと?」


「多分、恋……してるねぇ」


なんで深沢とこんな話をしてるのか、どうしてこんな流れになったのかがわからなかったけど、嫌な気にはならなかった。


ほんの少し声が優しくなって、口下手な私の言いたいことを、少しでも理解してくれたかなと思えたから。


しばらくして、フフッと笑った深沢が顔を上げて。


「やべぇな。桜井がそんなことを言うなんて、青春のパワーはすげぇよ。私の青春は今どこにいるんだよ。てか恋の力か?」


「さあ? でも、広瀬と付き合ってから、なんかこうさ、世界に色がついたって感じ? 特別な感情なんて何もなかったのにさ……いつの間にか好きになってて、もっと知りたいし、私も変われるって思えるんだ」


少し前の私なら、こんな恥ずかしいことを言うなんて考えられなかった。


でも……どうせ生きるなら正直に、精一杯生きれば恥ずかしいことなんて何もない。


広瀬の姿を見ていると、本当にそう思えたんだ。

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