幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
「美味しかったです。ご馳走様でした」
「ありがとうございます。どうぞまたお越しくださいね」
女将さんに見送られて、店を出る。
私はまた樹山の車に乗せてもらって、実家の最寄り駅まで送ってもらった。
その頃にはもう、午後3時半を過ぎていた。
「こんなとこまでありがとう。仕事、大丈夫なの」
「何とでもなるから。気をつけてな」
「うん、樹山も運転気をつけてね」
「ああ。しつこいようだけど、困ったことが起きたら連絡しろよ」
そう言って、樹山は名刺を渡してきた。私の名刺は古いやつだから、スマホの番号とメッセージアプリのIDをメモに書いて渡す。
とはいえ、今後はもうそんなに会うことはないだろうな……と思って別れた樹山と、2か月後に再会するとは考えていなかった。
あまつさえ。
「──じゃあさ、いっそ結婚しちゃおうか、私たち」
「え?」
「そしたら、うるさいこと言われなくなるんじゃない?」
「……そうだな、いい考えかも」
そんな会話を交わして、期間限定の「契約結婚」をすることになるなんて。
誰が想像しただろうか。