幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
【第2章】結婚と約束
「よろしくお願いします」
声を合わせて窓口に届を出すと、職員さんがそれを見て満面の笑顔になった。
「ご結婚ですか。おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
よく通る声がフロアに響いて、その場にいた人たち皆に拍手されてしまう。
樹山は堂々としたものだったが、私は居たたまれない気持ちで肩を小さくした。
「こちら、必要な手続きの一覧になっていますので、よくお読みください」
渡された、様々な住所氏名変更手順などの一覧表を受け取った樹山は「ほら、要るものだろ」と私に差し出してくる。
「え、……あ、そうか」
「しっかりしろよ、奥さん」
奥さん、と言われてむず痒いものが背中を這い上がる。
はい、と小さく返事をする私を、職員さんを始め周りの人は、微笑ましいと感じているのがありありとわかる表情で見ていた。
会社に行く樹山を、役所の出入り口を出るところまで見送る。
「じゃあ、俺はここで」
「わかった」
「ほんとに送らなくていいのか?」
「うん、手続き時間かかると思うから。運転気をつけて」
「ああ、サンキュ。じゃ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
運転席で、手を上げて軽く振った樹山に、私も手を振って応じる。