幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
車を見送って、建物の中に戻りながら、考えた。
……さて、どうしてこんなことになってるんだっけ。
2ヵ月前に再会したばかりの元同級生、ある意味幼なじみとも言える相手と、期間限定とはいえ結婚だなんて。
保険の手続きは3階です、と案内の人に教わりながら、慌ただしかったこの2ヵ月間のことを、私は思い返していた。
実家に戻ったあの日、当然ながら両親に、どうしていきなり辞めてきたのかと聞かれた。この7年間、ゴールデンウィークもお盆もお正月も毎回は帰らなかったほど仕事に没頭していたのを知っているから、当然の質問ではある。
『……ちょっと、急にこっちが恋しくなって』
『あんたらしくないこと言うわね』
『それにほら、先輩が事務所こっちで開いたし。どうせなら地元で仕事したいなって実は思ってたの』
『本当か?』
大きい仕事するなら東京が一番、という発言を覚えている両親は訝しんだけど、私は『本当だって』で押し通した。東京に行くのはどちらかと言えば反対だった両親に、面倒なことに巻き込まれたと話すのは憚られたのだ。「ほら見たことか」と言われそうな気がして。
それに、地元で仕事してほしいと昔から思っていたのは両親の方だから、最終的には私の説明に納得してくれた、はずだ。