幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

「え、そうなんですか」

「うん。平川くんが一級を取ったら結婚するんじゃないかな」

 平川さんは私と同じ年齢、今年30歳だ。六旗さんは24歳。

「二人は僕に気づかれてないと思ってるけど、わかっちゃうんだよね。仲がいいのは結構だけど、いつ『できちゃった婚』してもおかしくない感じで。だからもう一人アシスタントが欲しかったんだ」

 それで、新卒や中途に関係なく募集が出ていたのか。私にとってはラッキーだった。
 ……それに、私には当分、結婚方面の縁はなさそうだし。これまでの年月で、付き合った人は2人いたけど、私が仕事に熱中しすぎるのを理由にどちらからも振られていた。

「で? 穐本さんこそ、なんだってこんな中途半端な時期に辞めたの」

 永森さんに問われ、ちょっと迷ったけど、私は正直に理由を話した。内容が内容だけに、周りに聞こえないように配慮しながら。

 永森さんにとっても「恩師」である先生の話だから驚くかと思ったけど、聞いている間の永森さんは終始落ち着いたものだった。そして話が全部終わった時、やれやれと言いたげなため息をついた。

「またか……」

「何ですか、『また』って」

「あの先生、前にも同じようなこと、しでかしてるんだよ」

「ええ!?」
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