幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
【第3章】同居と違反
「ただいま。佐奈子さん、いる?」
「あ、おかえり……昂士くん」
「飯作ってたの?」
「うん、さっき帰ったところで。早かったね」
「仕事と仕事の合間で、ちょっと暇だったから」
そっか、と私がうなずくと、樹山──昂士くんはすぐに、リビングダイニングから出ていく。着替えてくるのだろう。
私が豚汁を作っている横のコンロには、カレーが半分ほど入った寸胴がある。一昨日、昂士くんが作っていたものだ。
結婚という名目の同居を始めて、2ヶ月ちょっと。生活は思った以上にスムーズで、日々穏やかに過ぎていっていた。
【2 家事は基本的に自分の分だけをやる】
この項目通り、料理も食器洗いも洗濯も、相手の分に手出しはしないようにしている。逆に言えば、相手のことを気にせず、自分の都合でできるから、無理をしなくていい。
一人暮らしの時と変わらない家事ペースは気分的に楽だった。
ただ、掃除ばかりはそういうわけにいかない。昂士くんが去年買った(お祖父さんの遺産が入ったとかで、キャッシュで!)というタワーマンションの部屋は、2LDKである。アイランドキッチンが付いたリビングダイニングと、お互いの寝室にしている部屋。あとは当然ながらお手洗いとお風呂場。間借りしている以上、自分の部屋だけを掃除するというわけにはいかなかった。