幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

 夜11時半過ぎに帰って来た昂士くんは、驚いた顔でリビングに入って来た。

「まだ起きてたの?」

「資格試験の勉強、今日のノルマまだだったから。夕ごはんは?」

「あー、急いで新幹線乗ったから実は食ってないんだ。白飯、余ってたりする?」

 質問に答えない代わりに、私は冷蔵庫からお皿を取り出した。

「……え、それって」

「もしかしたら食べるかな、と思って多めに作ったの。迷惑だったかな」

 これって契約違反になるだろうか。そんな思いを込めて尋ねると、昂士くんは目を見開いた後、破顔した。

「いや、むしろありがたいよ。助かった」

 予想以上に嬉しそうな顔をされて、私の方が戸惑う。

「そ、そう。ならよかった。スープもあるよ」

「マジ? じゃあ1杯もらうよ」

「どうぞ」

 レンジでチャーハンを温めている間に、スープを火にかける。その一連の動作がうきうきして見えるのは、こちらの考え過ぎだろうか。

「いただきます。……うまい!」

 明るい声でそう言われて、また戸惑ってしまう。

「そ、そうかな」

 メインの味付け、中華スープの素なんだけど。

「うん、スープも野菜の出汁が出ててうまいよ。ありがとう」

「……どういたしまして」

 戸惑った声で返すが、昂士くんは気にしていない様子で、がつがつと気持ちいい食べっぷりでチャーハンをかき込んでいく。
< 45 / 104 >

この作品をシェア

pagetop