幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夜11時半過ぎに帰って来た昂士くんは、驚いた顔でリビングに入って来た。
「まだ起きてたの?」
「資格試験の勉強、今日のノルマまだだったから。夕ごはんは?」
「あー、急いで新幹線乗ったから実は食ってないんだ。白飯、余ってたりする?」
質問に答えない代わりに、私は冷蔵庫からお皿を取り出した。
「……え、それって」
「もしかしたら食べるかな、と思って多めに作ったの。迷惑だったかな」
これって契約違反になるだろうか。そんな思いを込めて尋ねると、昂士くんは目を見開いた後、破顔した。
「いや、むしろありがたいよ。助かった」
予想以上に嬉しそうな顔をされて、私の方が戸惑う。
「そ、そう。ならよかった。スープもあるよ」
「マジ? じゃあ1杯もらうよ」
「どうぞ」
レンジでチャーハンを温めている間に、スープを火にかける。その一連の動作がうきうきして見えるのは、こちらの考え過ぎだろうか。
「いただきます。……うまい!」
明るい声でそう言われて、また戸惑ってしまう。
「そ、そうかな」
メインの味付け、中華スープの素なんだけど。
「うん、スープも野菜の出汁が出ててうまいよ。ありがとう」
「……どういたしまして」
戸惑った声で返すが、昂士くんは気にしていない様子で、がつがつと気持ちいい食べっぷりでチャーハンをかき込んでいく。