幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
──そして、さらに1ヵ月が経った、12月初め。
11月の終わりからはひどく冷え込んで、床暖房を入れていないと足が冷たくてたまらない、という日が続いた。
私も『保険メルカート』以外の仕事が重なって忙しかったけど、昂士くんはさらに忙しい様子で、毎日の帰宅が午前様になっていた。朝早くの出勤も変わらずで、ろくに寝ていなさそうな様子が気になったけど、お互いの仕事に口出ししないという契約条項を思い出しては口をつぐむということを繰り返していた。
そんな日々が続くこと、10日ほど。
夜7時頃、久々に早く帰れた直後、閉めたばかりのドアの鍵が回る音がした。
振り返ると昂士くんで、ドアを半開きにした状態で、前のめりの姿勢になって固まっている。
妙な様子に駆け寄ると、顔が真っ赤で呼吸が浅い。額に手を当ててみると、非常に熱かった。
「すごい熱じゃないの」
「……大丈夫、そんなでもない……歩いて帰ってこられたから」
「こんな熱で、こんな寒い中を歩いて帰ってきたの? 何やってるの!」
思わず飛び出た言葉は、叫びに近かった。
「会社からタクシー使えばいいじゃない。それぐらいのお金か、カードかあったでしょう? どうしてそんな無理するのよ」