幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

 思い返せば、今朝出勤する時も、頭を押さえてちょっと辛そうにしていたのだ。
 本人の「寝不足」という言葉を信じて、熱を測らせたりしなかったのが不覚だった。

「今日は、どうしても出なきゃいけない会議があったから……」

「会議と自分の体とどっちが大事なのよ、バカ」

 あまりの仕事至上主義が腹立たしくて、私は叱りつけてしまう。

「……ごめん、心配かけて」

「心配ぐらい、するわよ。契約結婚の仲でしょ」

「……そうだな」

「もうしゃべらないで。すぐにベッド入る方がいいから」

 私が運んであげることはできないから、なんとか寝室まで歩いてもらい、ベッドに座らせる。コートとスーツのジャケットを脱がせて、ネクタイをほどき、ベルトを外して横にならせた。

「薬は飲んだ?」

「いや……」

「じゃあお粥作ってくるから、ちょっとでも食べてから飲んで」

 残りご飯で白がゆを作り、器に盛ってから塩をちょっと振る。
 お盆に、水と熱冷ましの薬とを一緒に載せて運んでいく。

 昂士くんはお粥を3分の1ほど食べた。それから薬を飲み、ふたたび横になると、すぐに寝入ってしまった。ここ最近の寝不足もたまっていたのだろう。

 氷水に浸けてしぼったタオルを、額に載せてあげる。さっき体温を測ったら、39℃を超えていた。かなりの高熱だ。
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