幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

 ベッドに押し倒される格好になって、激しい動揺が襲ってくる。

 さっき私を引き寄せて抱きしめた手は、その力を緩めないままに、私の肩をマットレスに押さえつけている。
 見下ろす目は、初めて見るような熱を帯びている──これが、情欲、というのだろうか。今までに一度も目にしたことのない「男」の顔をしていた。

 鼓動の響きと音が、急にうるさく聞こえだした。まるで耳元に心臓が移動したみたいだ。

「ちょ、っと……何もしないって、約束」

「──ごめん、無理」

 短く言い捨てた後、昂士くんは顔を近づけてくる。

 重なった唇は柔らかくて、ひどく熱かった。濡れた舌先でなめられて、思わず唇を開くと、隙間からすかさず入り込んでくる。厚みのある舌が、私の前歯を、歯茎をねっとりとなぞっていく。

「ん、……ふ、ぅ」

 慣れない感触に苦しくなって、声が漏れる。思いがけずねだるような響きの声に煽られたように、舌の動きが大胆になって、口内を蹂躙する。

 のしかかる体は思った以上に大きくて重くて、体をよじってもまったく抜け出せない。それどころか、動くたびにますます、押さえつけられる力が強まるように感じた。

 これから起こることを想像して、知らず、体の奥から震えが起こる。
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