幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

『──ごめん、無理』

 あれはどういう意味なのか。

 禁欲生活が限界ということだったのか。彼はどこからどう見ても健康な成人男子だから、そういう欲求が抑えられない時があってもおかしくはない。
 だから、その時近くにいた私に……仮にとはいえ妻である私に、手を出したということだろうか。

 そう考えるのが妥当なのはわかっていた。

 けれど、その結論に胸がもやもやするのは──私が、彼になら抱かれていいと思ってしまったからだ。初めてを捧げてもいいと。

 彼は優しかった。私を気遣って、ゆっくり事を進めてくれた。
 体を繋げてからは、余裕のない様子も見せていたけれど、それでも私がどう反応しているかを気にしてくれていた。

 昂士くんが初めての人で良かった、と思う。心の底から。

 そんなふうに感じているのは、私の、彼に対する感情が変化しているからだ。
 この4ヵ月で進行してきた変化は、自分でも戸惑うほどに大きく、でも認めないわけにはいかないほどに、はっきりとしている。

『──嫌、か?』

 不安そうな、傷ついたような目を向けられた時、彼の望むようにしてほしいと思った。彼に抱かれるのを、自分でも望んでいた。

 ……この人を好きなんだと、その時にたぶん、気づかされた。
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