幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
「……そう言うそっちは、体調大丈夫なの?」
「おかげさまで」
にやりと笑った表情に色気を感じてしまって、また心が乱れる。
昨日の高熱が嘘のように、すっきり気分の良さそうな顔をしていた。
……実際、すっきりしたんだろうな。なんてことを思った自分がはしたない。
「じゃあ、お言葉に甘える」
「ん、了解」
助手席に乗りシートベルトを締めると、ゆっくりと車が発進する。
朝の、通行量の多い大通りを走らせる運転には、危なげなものを感じない。どうやら本当に、体調は回復しているようだ。
「あ、ここで……」
ここでいい、と口にしかけた制止はスルーされた。事務所前に車を止められると目立つから、手前のコンビニ前で降ろしてもらおうと思ったのだが、配慮も空しく、事務所前まで車は進んでしまった。
しかも、永森さんや、他の二人が出勤してきたところに、かち合ってしまった。
始業前の高級車の到着に、何事かと全員が注目している。
「降りないの?」
「──降りるけど」
「仕事頑張ってな」
「そっちも」
ドアを開いて私が姿を見せた途端、男性二人は口をぽかんと開け、六旗さんは「ええっ」と驚きを口に出している。
助手席のドアを閉めると、窓越しに昂士くんが軽く手を振った。
うなずきで応じると、車はさっきと同じように、ゆっくりと発進して去っていく。