幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

 その日は、隙あらば六旗さんが「同棲生活」の詳細を聞き出そうとするので苦労した。他の二人が抑えようとしてはくれたけど、彼らの目も、隠しきれない好奇心でうずうずしていた。
 致し方ないことではあるけれど、今まで隠していた分、加えてまだ隠していることがある分、いたたまれない。

 そして、その日の終業時間近く。

 まるで時間を見計らったようなタイミングで、車が事務所前に止まった。

「皆さん、お疲れさまです」

 正面入口から入ってきた人物に、皆が目を見開く。

「樹山さん、どうも……こんな時間にどうなさいました」

「彼女を迎えに来たんです」

 永森さんの質問に、昂士くんは笑顔で答えた。

「そろそろお仕事終わりのお時間ですよね?」

「は、まあそうですが……」

「すみません、ちょっと失礼します」

 席から立ち上がり、慌てて彼に駆け寄った。引っ張って建物の外に出る。

「な、何なの。どうしたっていうの」

「言っただろ、佐奈子を迎えに来たんだよ」

「忙しいんじゃないの?」

「まあ、実はまだ仕事残ってる。幸い持ち帰りにできる内容だったからそうした」

「なんで、そんなことしてまで……」

「心配だったんだよ。今日一日、体は辛くなかったか?」

 問われて、勝手に頬に血が上る。昨夜のことを思い出してしまったからなのは言うまでもない。
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